ベストリストに載るべき2018年ベストアルバム
- 最近は年末のベストリストの公開が凄く早いですよね。pitchforkやVinyl Me, Please、Gorilla vs. Bearのリストその他の50以上のベストリストをいずれも楽しく見ていて自分もリストを作ろうと思い立った訳ですが最初はジャンルを分けて分割しようと考えたのですが今回はジャンル分けをせずにシングル、EP、コンピレーション等をごちゃ混ぜにして一言ずつ紹介します。
3moonboys / Zawsze jest za krótko
ポーランドのブィドゴシュチュで結成された彼等の音楽は度々ニュージャズを結びつけてきたのですがこのアルバムではポップな要素を強化し直線的なサウンドを回避した構成が魅力的です。
MGMT / Little Dark Age
4枚目のアルバムを今年リリースしたMGMTのアルバムはシンセ・ポップと彼らがデビューからの特徴であるサイケデリックを良い意味で意識しないで新しい要素(ゴシックやジャングルポップ)を付加した作品だと思います。
Micromelancolié / Niwa
今年のベストレーベルの一つであるNona recordsから倒壊のプロセスを泥土とノイズと共に記録し、その残骸をアウトサイダーハウスに変換した風景があります。
Frank Ocean / Endless
元々は2016年のヴィジュアル作品だった「Endless」を様々なフォーマットで再度リリースしたこの作品の実験性や準アンビエント性などのバランスの良さも当然さる事ながら自分はファンが待ちに待ったこの作品を開封する動画を見る事もフランク・オーシャンを楽しむ要因なのかもしれないと思います。
Lauren Auder / Who Carry's You
2018年のバロックは60年代のバロックからアンビエントと正のファッショ化を果たす時が来ると良いなと思った作品です。
Beach House / 7
いつも傑作を世に送り出しているBeachHouseの新作の最大の魅力は、これまでの作品に多く含まれていたアルペジオによって綴られたサウンドを極力封印してLove Spirals Downwardsのようなイサリアルな一つの大きな気体を現した音と「Bloom」で確立した多層的なコーラスにあると思います。
吉澤嘉代子 / 女優姉妹
かなり前からきっとそうだろうという気がしていたのですが、このアルバムを聴いて本格的に吉澤嘉代子を好きになったと思います。ジャズポップ、ヌエヴォ・タンゴやムベーベの輪郭を吸収した現代の歌謡。
Kids See Ghosts / S/T
カニエ・ウェストとキッド・カディによるプロジェクト。キッド・カディのポップラップ要素にオルタナティブR&Bの要素を折衷した傑作だと思います。しかしカニエ・ウェストは本当に村上隆が好きですね。
Bliss Signa / S/T
メタルの膨張が凄いところまで来たなと思いました。Deafheavenでポスト・ロックとの折り合いを付けたと言うよりアトモスフィリック・ブラック・メタルの指標を付けたと個人的には思うのですがそこからまだまだメタルは膨張しているようです。インダストリアル・メタルのイメージも変わった上にUK Bassやグライムとも結びついた作品です。
電気グルーブ / MAN HUMAN
「今夜だけ」だけでリストに入れました。来年のアルバムに収録して欲しいです。「MAN HUMAN」のDEVILMAN crybaby版では無い方が遊び心があってcrybabyのポップさと相性良いように思って二倍楽しめます。
Ora Iso / Image Certifies
clipping.がヒップホップとWhite Sunsがノイズロックと融合させた事から見て取れるのはノーウェーブにはまだまだ可能性が秘められているという事です。
Kali Uchis / Isolation
ネオソウルをソフィスティーなサウンドに変容しただけでも妖しいのにさらに彼女がコロンビア出身だからかラテン要素と複雑なサイケデリックなサウンドがポップに表現された傑作です。
Them Are Us Too / Amends
ゴシックに包まれたこの作品は、もう半歩踏み込んだらホラーシンセの世界に突入しそうなバランスで出来たアルバムでダーク・ウェーブの更新とチェルシー・ウルフとの差別化にも成功していると思います。
聴き始めはいつものAutechreかなと思いつつも聴いているとcarefree counter dronalが流れた時にAutechreとしては珍しいアプローチだと思いながら不思議なAutechre内のアンビエントに居ました。
Stella Chiweshe / Kasahwa: Early Singles
この素晴らしいコンピレーションでカリンバに、もっと言うとショナ・ムビラ・ミュージックが良いと気づきました。「Nhemamusasa」のメロディーの切なさは不思議です。ジンバブエの音楽のきっかけにどうぞ。
SOPHIE / Oil Of Every Pearl's Un-Insides
2010年頃にヴェイパーウェイブと同時期に発生したバブルガム・ベースがSOPHIEによってより広く認知されたと思います。変容に変容を重ねているヴェイパーウェイブに対してバブルガム・ベースは外界の影響に捉われない強度を保ちながら静かな模索を続けています。(変容が悪いという意味ではありません)
Remember / The City Is My Friend
年間通してどれだけ作品をリリースするのかと思う程とりわけヴェイパーウェイブ作品を展開するDream Catalogueからヴェイパーウェイブ色の無い作品がリリース。歪んだシンセとプログレッブ・エレクトロニックがDream Catalogue的な結実として表出したような作品です。
Park Jiha / Communion
近年でアヴァンギャルド・ジャズとポスト・ミニマリズムと聞いて思い浮かぶのは「ヘレディタリー/継承」の音楽を手がけたColin Stetsonを浮かべました。彼女のサウンドの端々にそうした記号は浮遊してはいますがこれは韓国出身の彼女でなければ確立しなかったサウンドだったと思い至ったは現代のポスト・ミニマリズムを表現したのではなく現代のポスト・ミニマリズムを用いてコリアン・クラシック・ミュージックを表現したかったからではないかと思ったからです。
Aphex Twin / Collapse EP
もう既に取り入れていないテクノは無いんじゃないかと思う程、テクノを網羅したかに見えるAphex Twinの新作にはフットワークの禍々しい銀色の光沢がマルセル・デュシャンの物質(トランクの中の箱)に対するフェティシズムに呼応するかのように光輝きます。(フィジカル盤にプレスミスありとの事で残念です)
Jerusalem In My Heart / Daqa'iq Tudaiq
Constellationはいつも瑞々しい作品を次々にリリースしてくれてます。このJerusalem in My Heartの新作でも素晴らしい実験が行われています。アラビック・フォークミュージックとグリッチの要素を抽出しアヴァン・フォークでろ過された音に成功しています。
Robyn / Honey
アルバムとしては8年ぶりでスウェーデンからシンセポップの素晴らしさを贈り続けてくれているRobynの新作はハウス要素が濃厚でこれまでの作品とは毛色が違っていて安定したポテンシャルに陥らない音が鳴っています。
LAUNDER / Pink Cloud
LAで結成され、DIIVのZachary Cole Smithがギターで参加しているとの事で聴いてみたら大変よかったのでこれからもっと聴いてみたいバンドです。
People In The Box / Kodomo Rengou
冒頭のストーナーロックのような重い歪みから澄みきった音と歌詞で気づくと頭の中で流れているのがこのアルバムでした。
Jon Hopkins / Singularity
前作の「Immunity」のようなフィールドレコーディングによって形成された地上に近い音の構成とは異なり抽象的なアンビエンスの世界の外観を横断、あるいは往来しながらIDMの系統樹を克明に描写したミクロハウスの傑作です。
Eli Keszler / Stadium
彼のこれまでのキャリアの中でも突出した作品だと思います。エレクトロアコースティックな「空気感」をアヴァンギャルドなジャズに変換していく音とアンビエントなフィルターの中に内包されている不気味さの旋律が独特なパーカッションと平行して綴られます。
Iglooghost /Steel Mogu/Clear Tamei
去年Brainfeederから「Neō Wax Bloom」のリリース辺りから気になり出しファンターノのレビューをきっかけに好きになったのです。グリッチ・ホップとドラムンベースの間の吊り橋を渡る筈が充満する緩急によって全く新たな土地に来た感覚を堪能しました。
Tess Roby / Beacon
Mark McGuireの幻想的なギターの音色のようなメロディーに響くTess Robyの美しいヴォイスが魅力でJulia Holterとも少し違うエッセンスを届けてくれます。
Matt Karmil / Will
ミニマルの辺境を静かなエネルギーの発散させながら多層的に展開していくこのアルバムは初期のThe Fieldを想起させます。
素晴らしい実験性に乗せたア・カペラの世界。物腰の柔らかさに反して不気味な瞬間が魅惑的です。
Maria W Horn / Kontrapoetik
不穏なドローンサウンドのみならず神聖さが垣間見える瞬間があったり良い意味で安定しないアルバムでTim Heckerと共振する瞬間が窺えます。
Hekla / Muddle
重層的であるにも関わらず常に分裂した塊のような音がポップな様相と重なり合います。今年一番気になるアーティストでもあります。
Vril / Anima Mundi
去年テープでリリースしてた「Anima Mundi」をアートワークを一新してレコードでリリースした作品なのですが微妙にテープ版と違う?ような気がする。内容は間違いなく最高です。
青葉市子 / qp
作業中によく聴いていて一番聴いていて落ち着くアルバムでした。特に「テリフリアメ」と「海辺の葬列」の破壊力は凄まじい。シンプルな構成でもいつも歌詞を何回も確認したくなる作品です。NUUAMMとしての活動も素晴らしいので良ければそちらもお聴きになってみて下さい。
Hiro Kone / Pure Expenditure
香港(現在はNY在住)から重厚なインダストリアルテクノが表出して硬質なビートとダークアンビエントにも分類されないバランスの独特のマテリアルが鳴り響きます。
Daughters / You Won't Get What You Want
8年待った甲斐はありました。前作と変わった所と前作の良かった部分も削らずに内包させた最高傑作だと思います。ノイズロックの枠以外においても逸脱した作品だったからここまで彼らが有名になるなんて思ってもみなかったです。
- 上記程聴けては無いですが下記の作品群もあまりにも好みにフィットしてしまっている素敵な物ばかりなのでタイトルだけ挙げておきます。
V/A / Quare Groove Vol. 1
Connan Mockasin / Jassbusters
Skee Mask / Compro
Kasper Bjørke Quartet / The Fifty Eleven Project
Against All Logic / 2012-2017
SHXCXCHCXSH / OUFOUFOF
Nils Frahm / All Melody
Felicia Atkinson / Jefre Cantu-Ledesma / Limpid as the Solitudes
King Vision Ultra / Pain of Mind
Tim Hecker / Konoyo
The Field / Infinite Moment
Amnesia Scanner / Another Life
Tashi Wada with Yoshi Wada and Friends / FRKWYS Vol. 14 - Nue
Restive Plaggona / Bonded Labor
Hong Chulki / Will Guthrie / Mosquitoes and Crabs
Alessandro Cortini & Lawrence English / Immediate Horizon
Noname / Room 25
Manonmars / S/T
Coppice / Surreal Air Fortress
AL-90 / Makabr
Ben LaMar Gay / Downtown Castles Can Never Block the Sun
GAS / Rausch
Julia Holter / Aviary
Jay Glass Dubs / Plegnic
Tirzah / Devotion
cv313 / analogue oceans
Khalab / Black Noise 2084
林良憲 / Ambivalence
The Necks / Body
Ashley Paul / Lost in Shadows
Shinichi Atobe / Heat
Objekt / Cocoon Crush
H. Takahashi / Escapism
Mary Jane Leach / (f)lute songs
Grouper / Grid of Points