ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューションの記号から知るテクノ 前編
2005年にTV放送された「交響詩篇エウレカセブン」のリブート企画としてスタートした「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」の第2部が公開されました。今作はTV版でエウレカとの対照として描かれていたアネモネが主軸となって展開されています。エウレカセブンの舞台では様々なメカニック、事象、人名やサブタイトルに音楽のキーワードが盛り込まれています。特にテクノ音楽のキーワードが頻繁に出てくる事がこの作品の特徴です。監督の京田氏は次のように述べています。
僕らはアニメも好きだったけれど、テクノも好きで、テクノは ”自分たちの世代の音楽” つていう気持ちがあります。
「エウレカセブンWalker」より引用
この記事では本編に出てくるメカニックを手掛かりにテクノやテクノ周辺の音楽に関連アーティストそして現在のテクノを中心に紹介します。
シリーズを通して登場する人型ロボットの総称で民間用の呼称です。
TR - 909*1
出典 https://eurekaseven.jp/mechanic/
LFOと聞いて先ず頭に浮かぶのは1988年に結成されたウェスト・ヨークシャー出身のアーティストLFOでしょう。
「Frequencies」1991年作品
彼等の音の最大の特徴は1980年代後半にヨークシャーのレイブシーンを中心に確立されていったブリープ・テクノ*2特有の無変調のシンセラインです。
LFOのメンバーであるMark Bellの他の名義Speed Jackもここで紹介しておきます。
「Surge」1996年作品
94年に二枚のEPをリリースした後にR&Sレコーズからリリースされた「Surge」はLFOの音色よりトランスの要素とアンビエントの要素が合わさったような作品で、LFOとはまた違った魅力がある一枚です。残念ながらMark Bellは2014年に亡くなりました。
ブリープ・テクノは現在はUK Bassやデコンストラクテッド・クラブと融合しながら更新をしています。Errorsmithもその担い手の一人です。
- KLF
民間用に対して軍事用に使用されている人型ロボット
SH-101*3
出典 https://eurekaseven.jp/mechanic/
KLFの元ネタはThe KLFで間違いないでしょう。
The KLFは1987年に結成したリヴァプール出身のテクノアーティストです。
The KLFの音の構成は複雑でプログレッシブな側面やフィールドレコーディング、アンビエントにヒップ・ハウス、アシッド・ハウスといったジャンルを融合させたサウンドが特徴的です。
「Chill Out」 1990年作品
The KLFは他にも影響を与えたアルバムをリリースしています。
Avalanchesはサンプリングで曲を構成していくので有名ですが彼等は1987年の段階でThe JAMs*4という名義でサンプリングで構成されたアルバムをリリースしています。*5
「1987(What the Fuck Is Going On?)」1987年作品
- テクノ周辺音楽
アシッド・ハウスで有名なアーティストだと808 Stateや、そのメンバーのA Guy Called Geraldが居ますがアルバムによって音色の毛色が違うアーティストも居ます。
「Towards Thee Infinite Beat」1990年作品
スロッビング・グリッスルのメンバーであるジェネシス・P・オリッジがピーター・クリストファーソン等と1981年に始めたサイキックTVも90年に出したアルバムではアシッド・ハウスの要素が窺えます。
アシッド・ハウスの先駆的なアーティストの一人でSleezy D.がVirgoと1986年にリリースしたシングル「I've Lost Control 」は、アシッドな要素と同時にシカゴ・ハウス的な成分が多分に含まれています。それはVirgo(Marshall Jefferson)の存在が大きいと思います。
「I've Lost Control 」1986年作品
VirgoことMarshall Jefferson(マーシャル・ジェファーソン)はシカゴ・ハウスの代表の一人です。
シカゴの地名が冠されているのはまさにハウスがシカゴで生まれた事から付けられました。*6
「Animals EP」1997年作品
アシッド・ハウスの現在はLoneのようなサウンドに変容しています。
「Galaxy Garden」2012年作品
Lone(Matt Cutler)は英国のノッティンガム出身のグライム/ハードコア・ブレークスを主体としたアーティストです。Kona TriangleというIDMグループを経てソロ活動に。そこから様々なジャンルを吸収してR&Sから「Galaxy Garden」をリリースしました。
- Model500(ゲオルギオス)
「風の塔」内に設置されたホワイトルームへ向かう輸送機から投下される装甲車
出典 https://eurekaseven.jp/mechanic/
Model 500は1985年にホアン・アトキンスやマッド・マイク・バンクス、DJスカージ等によって結成されたデトロイト・テクノアーティストです。
デトロイト・テクノは1980年代中期に主流だったエレクトロやクラフトワークのようなプログレッシヴ・エレクトロニックに影響を受けてアンダーグラウンドで流れていたテクノの一つです。
ちなみにマッド・マイク・バンクスは「エウレカセブンAO」の22話サブタイトル「ギャラクシー・トゥ・ギャラクシー」の由来元であるGalaxy 2 Galaxyのメンバーでもあります。
「Deep Space」 1995年作品
そして1989年にジェフ・ミルズやロバート・フッドやジェームス・ペニントン等を加えたUnderground Resistanceを結成します。またX-101としても同時に活動している。
他のメンバーにアンドレ・ホランドが居ますがホランド・ノヴァクの由来じゃないかと個人的には思ってます。
Drexciyaも2曲参加しています。
「Journey of the Deep Sea Dweller I」2011年作品
Underground Resistanceのメンバーであるロバート・フッドの特徴にも触れておきます。彼はM-Plantレーベル設立者でもあります。彼の音楽性の最大の特徴はデトロイト・テクノと暗くスローテンポなミニマル・テクノの折衷です。
ロバート・フッドはFloorplanという別名義としても活動しています。
「Victorious 」2016年作品