ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの「最強ミックス」と最新ミックステープ
先日、今更ながら「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を観ました。
ネタバレを含みます。
偶然なのかスペース・オペラ版のジョジョ第5部なんじゃないのかと思って観ていました。そしてこの映画は音楽が重要だという情報を耳にしていたんですが、観ている最中は展開の合間に流される60年後半から70年代に集中した楽曲がテンポよく流れるだけで一体どの辺りが重要なんだろうと思っていたのですが見終えてその意味を理解しました。劇中に流れる音楽も素晴らしくてその時代を知らなくても充分楽しめると思ったのですがそこからもう少し掘り下げて今回はこの時代の音楽と周辺の音楽も紹介します。
出典:http://marvel.disney.co.jp/movie/gog-remix.html
ピーター達がノバ軍に捕らえられたシーンで流れるBlue Swedeの「Hooked On A Feeling」はこの映画でとても印象に残る曲の一つです。
「Hooked on a Feeling」1973年作品
冒頭の民族音楽のようなリズムがすごく特徴的ですが曲の後半はとても軽快なメロディーでポップな曲調に仕上げています。アルバムに収録されてる他の楽曲を聞くとポップ・ロックとユーロ・ポップをバランス良く取り入れたアルバムである事がわかります。
ユーロ・ポップは1970年代の初期にヨーロッパ本土を中心に展開されたジャンルで主にヨーロピアン・フォーク・ミュージックやポルカ、シュラガーそしてグラム・ロックなどの要素が仄かに内包された情緒的で商業的なポップソングが特徴です。
ユーロ・ポップ周辺音楽
「Nightflight to Venus」 1978 作品
70年代後半になるとヨーロッパにもBoney M.のようなディスコが流れます。ソウルやファンクからの影響を濃く受け継ぐアメリカのディスコと比べてドラムマシンや早めのBPMやシンセサイザーの多用が特徴です。ABBAはユーロ・ポップの代表でありユーロ・ディスコの代表でもあると思います。
「Cerrone 3」 1977作品
もう一人のユーロ・ディスコ代表はCerrone(セローン)でしょう。
Cerroneはフランスのヴィトリー=シュル=セーヌ出身のアーティストです。
元々は74年からKongasとして活動してたのですがその時のサウンドはファンク色が強かったのに対して76年からのソロ名義でのサウンドはエレクトロディスコ全般の中で最も最初期の発明であるスペース・ディスコの要素も入っている事が特徴です。
「Magic Fly」 1977年作品
そのスペース・ディスコとユーロ・ディスコの融合をほぼインストゥルメンタルな構成で完成させてのがSpaceです。
こちらのアーティストもフランス出身です。
視覚的なアプローチや、サウンド面のスタイルなどがダフト・パンクと類似するという事を指摘するファンも居て楽しいです。
「Windings 」2016年作品
スペース・ディスコを一新し続けるアーティストの一人がノルウェー出身のLindstrømです。
彼は90年代から確立されていったニュー・ディスコを既存のジャンルとニュー・ディスコの特徴のひとつのハウス要素を豊かに取り入れトライバル・ハウスやベルリン・スクールな要素も入れる事で「音の作物」の豊穣に成功しました。
「Confident Music for Confident People」 2018年作品
オルタナティブ・ダンスと聞いて最初に浮かぶアーティストはプライマル・スクリームだと思いますがオーストラリア出身のアーティストであるConfidence Manはニュー・ディスコの香りを断続的にデコレーションして遊び心を詰め込んだサウンドに仕上げているのが魅力です。Saint Etienne(セイント・エティエンヌ)や、King Gizzard and the Lizard Wizard(キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザード)を輩出したヘヴンリー・レコーズからリリース。
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーにおける音楽の存在について
主人公のピーターはどんな危機に直面してもウォークマンを取り返します。
母親の形見であるのなら何故もっと早く贈られたプレゼントを開けないのだろうと考えていて観終わって理解した事はあの「最強ミックス」は文字通りピーターをケビン・ベーコン(英雄)にする最強のアイテムでありピーターの為だけに作られた世界にたった一つのミックスでもある唯一無二のアイテムだったのだと思いました。生きる武器としてピーターは踊っていたのかなとも思います。贈られたプレゼントを開けられなかったのは母親の死を受け入れきれずに生きてきたピーターに信頼できる仲間を見つけた事で母親の死を受け入れプレゼントを開ける事が出来たのでしょう。
ミックス繋がりで無理矢理最新の最強ミックステープを二作紹介。
「Free Form(Mixtape)」2018年作品
Dizzy Faeはミネソタ出身の R&Bアーティスト。
Psymunやsu naによってプロデュースされた楽曲群はオルタナティブR&Bの特徴(ドリーム・ポップやUK Bassと親和性が高い)やエレクトロ・ポップの要素が前面に出ていてこれからすごく期待しているアーティストの一人です。
「GADA」 2018年作品
Littlebabyangelはカナダのモントリオール出身のアーティストです。
こちらも従来のオルタナティブR&Bを踏襲しながらもヒップホップの要素、とりわけインダストリアル・ヒップホップの要素が多分に含まれていて非常に奇妙な魅力が特徴的。
インダストリアル・ヒップホップは1980年代後半に現れたジャンルで音の特徴は従来のインダストリアル音楽にヒップホップのビートを組み合わせたものが主要で歌われる歌詞の内容が政治的な物が多くポリティカル・ヒップホップに近い側面もあります。